こんにちは、マーブルの高野です。
今回は、前回の続きです。前回の記事はコチラです。
前回の記事では、私が外資証券会社に勤めていた際に直面した際の話、
ファンド保有物件のリファイナンス条件が相当厳しくなった件や、最悪のケース、借り換え出来ずに銀行に物件を取られてしまう(担保実行)事になった話を書きました。
当社の記事を見ていただいている方の大半は個人の不動産投資家の方だと思います。
10年前のリーマンショック前後は、個人の不動産投資はここまでサラリーマン投資家が参入する熱いマーケットにはなっておりませんでした。
ケンビヤやラクマチ等の個人投資家専門のポータルも注目を浴びていなかったですし、プレイヤーが少ないので物件価格も高くなかったため、インチキオーバーローンなしにRC物件をメガバンクで買っていたサラリーマンが普通にいた時代でした。
個人の収益物件マーケットが徐々に盛り上がってきたのは2010年ごろからで、昨年2017年まで右肩上がりで賃貸業に対する金融機関の貸出残高が増えてきており、マーケットがどんどん盛り上がってきました。
さて、前回書いた記事の通り、そんな盛り上がりをみせてきた個人の不動産投資市場も、潮目が変わる時期が来たようです。
現状、どのような物件に変化が起こるのか、そして今後どうなっていくのか考えてみたいと思います。
下記は、以前記事にした物件のエリア×構造のセグメント表です。
このセグメントで考えると、私は間違いなく①地方×重量物件の取引のリスクが顕在化すると考えています。
理由は単純で、主に某銀行を使った中間省略案件の主戦場だったからです。
このセグメントの融資は、ほぼ某銀行一択でした。それが今、融資が出なくなったことで、ゲームのルールが変わるタイミングを迎えました。
現在、問題になっている、かぼちゃ融資は④都心×軽量物件に該当する約2,000億の融資ですが、①地方×重量物件に対する融資残高の大きさは、それとは比べ物にならない程巨額の融資残高のはずです。
コチラのリンクは約2年前に記載した下記の記事です。
このセグメント、中間省略が活況になる2012年程前までは、各地方に売価=積算価格くらいのRC、表面15%オーバーの案件がゴロゴロしておりました。
それが、この5年ほどで、どんなに田舎の都市でも某銀行の融資が付く重量物件は一律8-10%程度の利回りで販売される状況になってしまいました。
なぜでしょうか。
少し業者の視点から文章を書いてみます。
中間省略業者の立場では、某銀行の登場により、普通にマーケットに出てくる表面15%から場合によっては20%近い物件が、(積算評価がでて、かつ、そこそこの年収のあるサラリーマンが買主であれば、)積算評価までの融資が引っ張れることが分かりました。
軽く例を挙げると、積算評価1.5億・家賃年収1,500万円の地方RCを9,000万円(17%)で仕入れ、中間省略で顧客に1.5億円(10%)で販売し、売買差益6,000万円確定!! といった具合です。
(中間省略の初期は仕入れ価格も安かったため、たった1案件で本当に5,000万以上抜いている業者がいくらでもいました。)
そのため、某銀行の融資評価額から逆算して、ゴールシークで顧客への販売価格が決定される、といった不思議なマーケットが形成され、業者の抜き幅を最大限に取った結果、一律8-10%の販売価格に収れんしていったということです。
セミナー等で集めた情報弱者のエンド客に10%以下の利回りで販売できるため、中間省略業者からすれば、まさにこのセグメントはアービトラージ天国だったわけです。
こうなると新規参入が相次ぎ、免許番号(1)の不動産屋がタケノコのようにでき、地方のじーさんが1人でのんびりとやっている不動産屋が嵐のように物確電話が鳴り続ける事態となりました。
この、某銀行融資+中間省略登記の特性を利用して、ディールの抜幅が物件価格の30%オーバーなんていう業者も多く、両手仲介でもたった6%にしかならない仲介事業がバカらしくなっているような風潮さえあったように思います。
さて、前回の記事で、私は下記のように書きました。
いつの時代も、金融機関のファイナンスが不動産マーケットを作り、マーケットを壊す。
今回も全く例外ではないです。
むしろ、ファンドや新興デベロッパーといった法人がプレイヤーだった10年前と異なり、少なくとも今回は「個人」が対象なので、よりタチが悪いように思います。
務めている会社がつぶれた場合、最悪でも職を失うくらいで済みますが、個人で買った物件は、運営が上手くいかなくなっても、ノンリコースローンでもない限り逃れられません。毎月の家賃収入が赤字でローンを払えなくなっても、自分の給与所得から補填するなり、赤字でも物件を売却して金融資産で穴埋めするしかありません。
いまだに大きな問題になっていないのは、ファンドの短期融資でのファイナンスと異なり、耐用年数オーバーの超長期で融資を引いているため、単に問題が表面化していないだけの話です。
実際のところは、高金利、かつ超長期の元利均等返済で融資を調達しているため、見かけ上のCFはなんとなく帳尻があっているケースが大半なのではないでしょうか。
特に、業者販売の中間省略案件に1年間の家賃保証などがセットでついている場合、ひどい物件を買ってしまったという事実は、より分かりづらくなっていると思います。
返済予定表を見ると分かりますが、金利4%を超えるローンの返済金額のうち、2/3程度は金利のため、元金がほとんど減りません。
一方で、この地方×重量セグメントの物件は空室率が高く、修繕費用が年々増えるため、CFの下落率が他のセグメントよりも顕著です。
あくまで私の予感ですが、地方×重量物件を表面10%程度の利回り、かつ高金利で買っている投資家は、近い将来に私が経験したファンドバブル崩壊と同じような道をたどる可能性が高いように感じます。
売却を考えた時、既に下記の状態に陥っており、大きく損切したとしても、売却することが困難となります。
・(業者の中間省略利益がのっているため)最初の購入価格が高く、実勢の物件評価を大きく上回っている
・某銀行が手を引いたことで、このセグメントへのローンの出し手がおらず、買い手に融資が付かない
保有するにしても、下記のような問題に直面します。
・高金利の元利均等で調達しており、残債が全く減らないため、リファイナンスもできない
・空室率が高く、修繕費用が年々増えるため、経年でCFが他のセグメントよりも顕著に下落する
CFが回らなくなってから、ようやく問題に気が付いても、もうほとんど打つ手がありません。
投資家の給与所得や金融資産等を食いつぶしてどれだけ埋め合わせができるか。
銀行は、きっとこういう事態に陥ることまで想定した上で、投資家の給与所得も返済財源として融資していたのでしょう。
第三者委員会も、シェアハウス融資のエビデンス偽造がどうだったかで終わるのではなく、このセグメントの融資をしっかり見ると、恐ろしい事が判明するかと
そのため、これも以前記事に書きましたが、今すぐ売る考えはなくても物件を売るとした場合にいくらで処分できるか(Mark to market)、はしっかりと把握しておくべきです。
過去の記事はこちらです。
それにしても、この中間省略スキームは、マーケットにタチの悪い業者と能力が低い営業マンをどんどん輩出してしまったように思います。
単なる、一部の金融機関の融資バブルだったのですが、これが自分の実力だ!!と勘違いして事業拡張した不動産屋や、独立した営業マンはこれからが大変です。
あ、そういえば最近では、まだ蓄えのあるうちにと、会社を急に倒産させる業者もあるようですね。
こういった業者は、今後融資が付かないので売上が減少するためというよりは、過去に中間省略で売った案件の瑕疵担保責任が爆発する前に逃げたとみるべきかと思いますが。。
つくづく、この数年、無理に物件を売らずに良かったな、と思っています。
私自身は、マーケットがどんなフェーズであっても、リターンの出せる物件は必ずあると思っておりますし、実際に当社のお客様には、物件価格も落ち着いてきたので、いい物件が紹介できるような地合いになってきております。
当社は、社員全員に不動産の知識・経験はもとより、税務や購入後の運営ノウハウもしっかりつけ、適格なアドバイスができるよう教育しています。
感覚が合いそうだな、と思った方は是非ご面談にお越しください!
みなさまの投資の一助になりましたら幸いです。
※無料コンサルティングについて※
弊社では、毎日1-3名限定で面談を行っております。
収益物件購入・売却を検討されているお客様は、お気軽にお問合せページよりご連絡くださいませ。