こんにちは、マーブルの高野です。
以前、収益物件はざっくりと下記セグメントに分類して考えると理解しやすいとお伝えしました。
これら4つのセグメントの場合、具体的にはどのような収支になるのか、ケースで説明したいと思います。
添付は、三重県某市にあるRC物件、30世帯のファミリータイプです。
築年数は1983年と古いものの新耐震、満室稼働中、表面利回り13.7%、積算評価>売買価格と業者買い付けが入りそうな投資条件の整った案件です。
高利回りかつ、積算評価も出ているため、融資調達も問題なくできると考えられます。
このマイソクをみて「即、買いだ!!」と思う方も多いのではないでしょうか。
実際にすぐ売り止めになるような物件と思いますが、購入後の収支はどのようになるのでしょうか。
詳細分析していくと、そこまで簡単な案件ではないことが理解いただけると思います。
少し長くなりますが、お付き合いください。
まず前提条件ですが、通常のサラリーマンの方が購入するとして下記の数字を置いております。
前提条件
購入者属性:
・年収1,000万円のサラリーマン
・単身者でその他収入なし
ローン:
・融資額=諸経費込オーバーローン 1.45億円
・金利4.5%
・元利均等返済
期中:
・稼働率90%
・家賃下落率0.3%/年
・大規模修繕 外壁塗装1,000万(yr10)
売却時:
・20年保有
・売却価格 約6,700万円(表面利回25%)
下記が本物件購入にかかる諸経費(向かって右側)および、期中のランニングコスト(向かって左側)です。
購入時諸費用
まず右側の購入時諸費用ですが、今回のケースでは取得税含め、物件価格に対しトータルで約9.5%程かかります。
既にこのセグメントの物件をお持ちの方は理解できると思いますが、4つのセグメント中、購入金額に対しての初期費用が最も高くなります。
地方×重量物件を購入される場合、売買価格の約10%の諸経費がかかると覚えておけば、大きくブレることはないと思います。
およそ10%の諸費用のうち、特に登録免許税、不動産取得税の負担が重いです。
不動産取得税(地方税):固定資産評価額に対し、土地=1.5%、建物=3.0%
登録免許税(国税):固定資産評価額に対し、土地=1.5%、建物=2.0%
ここでのポイントは建物部分の課税方法です。
固定資産評価額のうち、土地部分は固定資産税路線価をベースに算出されるので地方の場合、評価額が低くなります。
一方、建物部分は、建築部材の単価をベースに算出するため、都心であろうが地方であろうが算出基準に変わりがありません。
RRを見てのとおり、地方都市ともなれば、ファミリータイプ一部屋当たりに取れる家賃はせいぜい5万円程度です。東京のように10万円以上が普通に取れる部屋はまずありません。
それにもかかわらず、建物にかかる税金は立地による差がありません。この点が、当該セグメントの税負担が重くなっている最大の理由です。
本物件のように、土地評価額が8900万円の物件の場合、建物部分のみで、実に445万円の税負担となります。
購入時諸経費のうち、削減できる可能性があるのは、現実的に保険金額くらいしかありません。
これを年払いにすることにより、期中のランニングコストに変更することが可能です。
ランニングコスト
変動費、固定費に分けて算出していますが、本物件の場合、ランニングコストは収入の30.13%となっております。
当該セグメントの物件を購入する場合、ランニングコストの割合(OPEX比率)は収入の30%は見ておいた方が無難です。
裏を返せば、満室経営をしていても、70%稼働の物件と同じぐらいの収入になってしまう可能性があるということです。
これほどOPEX比率が高い最大の理由は、固定資産税です。
このセグメントの固都税は、家賃の1-2か月分かかってくるケースが多いです。
本物件のケースでは年間150万円ですが、これは満室稼働1か月分の収入149万円とほぼ同額です。
以前ご説明したように1年中満室運営しているケースでも92%稼働と同じになる程大きな支出となりますが、このインパクトは、マイソクの表面利回り13.74%には出てこない項目です。
また、これはセグメントに限らずですが、EVの有無はOPEX比率に大きく影響してきます。
仮に本物件にEVがない場合、点検費2.5万+電気代約2万=4.5万円程の削減が可能です。
他にも、給水ポンプやオートロックシステム等、電力系の設備が多い物件の場合、OPEX比率が高くなります。
期中のOPEXを算出する際、固定費は積み上げで算出することが可能です。
問題は、現在の入居者の退去時に発生する原状回復費用、リーシングにかかる広告料等の変動費の見積もりですが、各入居者の室内使用状況を確認するのはまず不可能なので、ここを正確に予測するのは困難です。私の場合は、原状回復+リーシング費用で満室家賃の5-7%程度を見込んでいるケースが多いです。
いかがでしたでしょうか。
購入時の諸費用が売買価格の10%もかかる点や、毎月のランニングコストが家賃収入の30%もかかる点は、おそらく投資家の皆さまの想定よりも高いのではないでしょうか。
このセグメントの物件は、まさに金食い虫です。
高利回りで売りに出されるにはそれなりに理由がありますので、購入前にしっかりチェックしておきたいところですね。
次回の記事では、本物件の年間収支を説明していきます。
みなさまの投資の一助になりましたら幸いです。
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